歌は後天的に上手くなる?ボイストレーニングで変わる5つのこと【研究から解説】
2026.10.05
歌は、後天的なトレーニングで上手くなる可能性があります。
歌声そのものには、生まれ持った声帯や共鳴腔の形、これまでの音楽経験などによる個人差があります。しかし、歌の上手さは声質だけでは決まりません。音程を合わせる、息と声を協調させる、使える音域を広げる、リズムをそろえる、自分の歌を聴いて修正するといった要素は、練習できる「技能」です。
研究でも、訓練経験と音程精度の関連や、一定期間の発声トレーニングによる声域指標の改善が報告されています。一方、すべての人が同じ速度で、同じ声になるわけではありません。大切なのは、「才能があるか、ないか」で終わらせず、現在どこでつまずいているかを分けて考えることです。
結論|歌の上手さは「素質だけ」では決まらない
「自分は音痴だから、練習しても意味がない」
そう決めてしまうのは、少し早いかもしれません。
歌うときには、耳で音を捉え、脳で高さやタイミングを判断し、呼吸・喉・口などを協調させて声にします。さらに、自分の声を聴きながら微調整します。つまり歌唱は、複数の感覚と運動を組み合わせた技能です。
もちろん、持って生まれた声質や音域、音を捉える得意不得意はあります。ただ、「いい声の人だけが上手くなれる」という話ではありません。自分の声に合うキーと発声を知り、必要な要素を一つずつ練習すれば、今より歌いやすく、伝わる歌へ近づけます。
「才能」の二文字で閉店するには、まだ早いのです(笑)。
研究から分かる3つのこと
1.訓練経験者は、平均的に音程の誤差が小さかった
プロ・セミプロの訓練歌手10人と非プロ歌手10人を比較した研究では、さまざまなテンポ、音域、発音条件で歌った際、訓練歌手の平均的な音程誤差は非プロ歌手より小さい結果でした。研究全体の平均は、訓練歌手が25.0セント、非プロ歌手が34.5セントでした。
ただし、これは20人を比較した研究であり、「レッスンだけが差を生んだ」と証明する介入試験ではありません。それでも、音程のコントロールと訓練経験に関連があることを示す材料の一つです。
参考:Effect of Training and Level of External Auditory Feedback on the Singing Voice: Pitch Inaccuracy
2.一定期間の発声練習で、使える声の範囲が広がった研究がある
大学院で声楽を学ぶ40人を対象にした無作為化比較試験では、10週間の発声機能訓練と声の衛生指導を行ったグループで、声域と音量を組み合わせた「ボイス・レンジ・プロファイル」の面積が有意に増加しました。声の衛生指導だけを受けたグループでは、有意な改善は確認されませんでした。
対象者はすでに専門的な声楽訓練を受けている学生です。そのため、初心者にも同じ変化がそのまま起きるとは言えません。しかし、経験者であっても、体系的な練習によって発声能力の一部が変化し得ることを示しています。
3.変わる項目と、簡単には変わらない項目がある
声楽専攻の学生14人を4学期にわたって追跡した研究では、発声可能な周波数・音圧の範囲に訓練に伴う変化が見られました。一方で、ビブラートや「シンガーズ・フォルマント」には、訓練期間に応じた明確な変化が確認されませんでした。
ボイストレーニングは魔法ではありません。何でも一度に変わるのではなく、変化しやすい要素と時間のかかる要素があります。だからこそ、最初に目標を決め、変化を録音などで確認することが大切です。
参考:Effects of vocal training on the acoustic parameters of the singing voice
ボイストレーニングやボーカルレッスンで変わる5つのこと
1.音程を合わせる方法
音程が外れる原因は、一つではありません。
成人の音程が不正確な歌い手15人を調べた研究では、音の高さは聞き分けられるのに声で再現しにくい人と、聞き分けと再現の両方に課題がある人がいました。音を聞く力と、声で合わせる力の間に単純な相関も見られませんでした。
つまり、「音程が外れる=耳が悪い」とは限りません。ボーカルレッスンでは、まず音を聞き分ける段階、声を出す段階、自分の声を確認する段階を分けます。ピアノの単音、短いフレーズ、録音などを使うと、どこから練習すべきか見つけやすくなります。
参考:Pitch discrimination and pitch matching abilities of adults who sing inaccurately
2.息と声のバランス
息をたくさん吐けば、大きな声や高い声が出るとは限りません。息が先に逃げると、フレーズの途中で苦しくなったり、声が不安定になったりします。
レッスンでは、姿勢、吸う量、息を流す速度、声を出し始めるタイミングを確認します。目的は「腹筋を鍛えれば全部解決」ではなく、必要な音量やフレーズに合わせて呼吸と発声を協調させることです。
3.無理なく使える音域と音量
トレーニングでは、最低音や最高音の数字だけを追いません。小さな声から大きな声まで、音色を崩しすぎずに使える範囲を少しずつ整えます。
原曲キーにこだわって苦しそうに歌うより、まず自分に合うキーで安定して歌う方が上達につながる場合があります。高音は根性で押し上げるものではありません。喉に力が入りすぎる日は、キーを下げるのも立派な技術です。
4.リズム、言葉、フレーズの伝わり方
音程が合っていても、歌の入りが遅れたり、言葉の子音が曖昧だったりすると、全体は不安定に聞こえます。
歌詞をリズム読みする、手拍子に合わせる、母音だけで歌う、ブレス位置を決める。こうした練習で、メロディーと言葉を別々に整理できます。採点機の点数だけでなく、「何を歌っているかが伝わる」ことも、大切な上達です。
5.自分の声を聴いて修正する力
歌っている最中に自分が感じる声と、録音で聞く声は違って聞こえます。最初は「えっ、私の声ってこれ?」となるかもしれません。ほぼ全員が一度は通る道です(笑)。
録音を使うと、「Aメロは安定している」「サビの最初だけ音が上ずる」「語尾で息が足りない」のように、課題を具体化できます。レッスンの価値は、ただ感想をもらうことではなく、次に何を直すかを言葉と練習方法に変えることにあります。
では、生まれつきの才能は関係ないのか?
才能や個人差も、もちろん関係します。
訓練歌手、歌が得意な未訓練者、歌が得意ではない未訓練者を比較した研究では、訓練歌手と歌が得意な未訓練者の音程合わせに差が見られない条件があり、どちらも歌が得意ではない未訓練者より正確でした。
この結果からも、「上手さは全部レッスンのおかげ」「全部生まれつき」のどちらか一方に決めることはできません。もともとの得意さがある人もいれば、練習でコントロールを身につける人もいます。
重要なのは、他人と同じ声になることではなく、自分の声でできることを増やすことです。
レッスンを受けるときに決めておきたい目標
「歌が上手くなりたい」だけでも、もちろん大丈夫です。ただ、次のように目標を具体化すると、練習内容と変化を確認しやすくなります。
- カラオケで、サビの音程を安定させたい
- 一曲を最後まで苦しくならずに歌いたい
- 高音で喉に力が入りすぎる状態を見直したい
- 人前でもリズムを崩さず歌いたい
- 録音やライブで、歌詞が伝わる歌い方をしたい
同じ曲を定期的に録音し、「音程」「リズム」「息」「言葉」「表現」を分けて振り返るのもおすすめです。毎回すべてを直そうとせず、一回の練習で一つか二つに絞ると、変化をつかみやすくなります。
声の痛みや、続くかすれはレッスンだけで判断しない
ボイストレーニングは、医療行為ではありません。
米国国立聴覚・コミュニケーション障害研究所(NIDCD)は、かすれ、話しにくさ、喉の痛みや負担感などがある場合、原因を確認するため医師へ相談するよう案内しています。また、声がかすれているときや疲れているときは、無理に話したり歌ったりしないことを勧めています。
痛みを我慢して高音を出す練習は、上達の近道ではありません。症状が続く場合は、耳鼻咽喉科など専門の医療機関へご相談ください。
参考:NIDCD「Taking Care of Your Voice」
SGMのボイストレーニングは、一人ひとりの目標から始めます
愛媛県松山市の音楽教室SGMでは、初心者から上級者まで、一人ひとりの目的に合わせたボイストレーニングを行っています。
「カラオケの得点を上げたい」「歌の基礎を身につけたい」「ステージで伝わる歌を歌いたい」「録音にも挑戦したい」。目標が違えば、必要な練習も違います。
一部校舎では、実際にレコーディングをしながら作品づくりとトレーニングを進めることもできます。録音で自分の変化を確認できるのは、少し怖くて、とても役に立ちます(笑)。
よくある質問
大人になってからでも、歌は上手くなりますか?
大人でも、音程の合わせ方、呼吸と発声の協調、リズム、発音、自己修正などは練習できます。ただし、変化の内容と速度には個人差があります。最初に現在の課題を分け、同じ曲の録音を比較すると変化を確認しやすくなります。
音痴はボイストレーニングで直りますか?
「音痴」という言葉には、音を聞き分けにくい、声で狙った高さを再現しにくい、リズムがずれるなど、異なる状態が含まれます。原因によって練習方法が違うため、必ず直るとは断定できませんが、課題を分けて練習することで改善できる部分はあります。
何回レッスンを受ければ効果が出ますか?
目標、現在の状態、練習頻度によって異なるため、一律には言えません。まず一曲または一つの課題を決め、数週間から数か月単位で録音や歌いやすさを比較する方法が現実的です。
高い声は誰でも出せるようになりますか?
練習で使いやすい音域が広がる可能性はありますが、声帯の状態や身体的特徴には個人差があります。原曲キーだけを目標にせず、自分の声で無理なく歌えるキーや発声を見つけることも大切です。
独学とボーカルレッスンの違いは何ですか?
独学でも録音や基礎練習はできます。レッスンでは、自分では気づきにくい癖を第三者が整理し、目標に合わせて練習の順序や難易度を調整できる点が大きな違いです。
まとめ|上手くなる第一歩は、自分の声を知ること
歌は、後天的な練習で変えられる部分があります。
音程、呼吸、使える音域、リズム、言葉、そして自分の声を聴いて修正する力。これらを一つずつ整えることで、「前より歌いやすい」「録音を聞いても逃げたくない」「人前で一曲歌えた」という変化につながります。
一方で、声質や音域には個人差があり、すべての人が同じ声や同じ結果になるわけではありません。だから、誰かの声になることより、自分の声の使い方を知ることが大切です。
「私は才能がない」と決める前に、一度、自分の声を一緒に分解してみませんか。
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